<ハザード/リスク>
a)想定震度
横浜市の震度ハザードマップによると、当パークシティ周辺の想定震度は震度6強(元禄型関東地震)となっています。東日本大震災における当パークシティの震度(出典1。図1)は、隣接区から推測して5弱又は5強と考えられ、来る震災は東日本大震災の時の揺れの2倍以上(加速度で比較)の揺れとなります。
高層階ではそれ以上の揺れが想定されます。東日本大震災でも高層階では家具、テレビの転倒、天井から吊り下げた照明器具の損傷、食器棚の食器が割れるなどの被害がありました。
防災科学技術研究所の実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)を用いた検証実験では、地上で震度5強の揺れに対し、10階で震度7になるとして実験が行われています(出典2)。
東京消防庁アンケート調査によると、11階程度から家具類の移動の発生割合が高くなっています(出典3)。
このため、家具の転倒防止には特段の措置が必要です。また震度6強の場合、水道・排水管が損傷する事態も想定する必要があります。
※SRC構造14階建てである当パークシティ建物の固有周期は約0.7秒(T=0.049N、日本建築学会,2000))であり、長周期地震動の範囲からは外れている。
出典1) 気象庁報道発表資料「平成 23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震」により各地で観測された震度について(精査後)
出典2)あなたは何階に住んでいますか? 1階は震度5強でも10階では震度7!? 高層ビルの危険を実験で検証
出典3)平成23年度長周期地震動等に対する高層階の室内安全対策専門委員会報告書、東京消防庁、2012年2月のp.52、図3-1-9 _
b)液状化
当パークシティの全域で液状化の可能性があります(液状化可能性指数 PL:5~15)。液状化面積率は18%です(出典4)。もし地中に埋められたライフライン(電線、水道管、下水管、ガス管)が破損すると、ライフラインが使用できない期間が長期化します。
出典4)「南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定 第3部被害想定手法」(平成25年5月14日。東京都防災ホームページ)
c)浸水(津波及び内水浸水)
5つの地震モデルから想定される津波による浸水は、場所によって30cm~1mです(左図の黄色)。また、内水浸水(下水道からの氾濫)では、場所によって20cm~50cm(右図の薄い青)、うちごく一部で50cm~1mです(同じく濃い青)。つまり1階の住戸の一部で津波又は内水浸水で床上浸水する可能性があります。
一方、震災発生時に重要な情報センターとなる管理センターの1階は周りの地面とほぼ同一高さであるため、わずかな浸水でも監視盤や放送盤が使えなくなります。津波ハザードマップで想定する5つの地震モデルのうち元禄関東地震タイプとそれに連動する地震では、地震発生からわずか1分で津波が平潟湾に到達します。これではとても浸水防止対策を講じる余裕はなく、火災監視や一斉放送の機能が失われる可能性があります。
表1:津波ハザードマップで想定された5つの地震モデル
地震タイプ名 |
最大津波高さ |
平潟湾までの到達時間 |
当パークシティ内の浸水深さ | 津波浸水予想図 |
相模トラフ沿いの海溝型地震(西側) |
3.4m | 30分 | なし | 当パークシティに津波は到達しない |
相模トラフ沿いの海溝型地震(中央) |
2.9m | 110分 | 0.1~1m | 当パークシティに津波が到達する |
元禄関東地震(震源地:房総半島南端の野島崎付近) |
2.8m | 1分 | 0.1~1m | 当パークシティに津波が到達する。当相模トラフ沿いM8.1 房総半島南端の野島崎付近を震源とする。 |
元禄関東地震と国府津-松田断層帯地震の連動地震 |
2.8m | 1分 | 0.1~1m | 当パークシティに津波が到達する。 |
慶長型地震(旧ハザードマップの想定) |
3.9m | 75分 | なし | 当パークシティに津波は到達しない。 |
d)火災
ガスは震度5相当以上の揺れで自動的にストップします。ガス調理器を使用中に地震が発生した場合は、消火よりも、熱湯や油でやけどしないようただちに台所から出て身の安全を守ることを優先し、揺れが収まってから消火を確認しましょう。電磁調理器を使用している場合は地震発生時の自動消火機能があることを確認しましょう。
東日本大震災では、震災時の火災の原因の54%が電気関係でした。建物の倒壊や家具の転倒で配線が損傷し、通電時にショートして出火する通電火災の可能性があります(出典5)。その他の出火原因としてはヒーターなどが可燃物に接触して通電時に着火する場合があります。そのほかコンセントにホコリが溜まって漏電する場合があります。
当パークシティでは建物が倒壊する可能性は少ないので、家具の転倒防止を適切に行うことによって、配線損傷による通電火災のリスクを下げることができます。
一方、当パークシティでは金沢消防署に配備されている35m級はしご車が届くのは11階までです。初期消火が困難かつ玄関からの脱出が困難な場合は、南側のバルコニーの隔壁を破り、避難ハッチ、避難梯子を使って脱出します。
出典5)総務庁消防庁「地震火災対策について」
e)ガラス等の破損
窓ガラス、並びに、食器棚や飾り棚のガラス戸が破損して床に散乱して足を怪我する恐れがあります。また、東日本大震災では当パークシティの高層階で吊り下げ式照明器具が激しく揺れて破損しました。
ガラス飛散防止シートを貼り、照明器具を天井貼付け型に替えることによってリスクを低減できます。
f)飲料水・生活用水・排水
階段入口の床直上にあるコンセントはわずかな津波浸水・内水氾濫で没水し、ブレーカーが落ちてその階の全住戸が停電します。コンセントが渇いて通電が再開できるようになるまでの間、停電が続くリスクは少なくないと考えられます。
パークシティの現在の排水管は耐震仕様ではないため、もし各階段のどこかで排水管が破損すると、その階段全体でトイレの使用はもとより水道も使用できなくなります。さらに、b)に述べた液状化現象がパークシティの一部で起きた場合、その程度によって埋設されているライフラインが破損する可能性がゼロとは言えず、そうなると断水・トイレ排水禁止がさらに長期化しまうリスクがあります。
g)避難先の状況
旧震災マニュアルで一時(いっとき)集合場所としていた泥亀1丁目公園多目的広場(旧三井グラウンド)は30cm以上2m未満の津波浸水が想定されています(「c)浸水」右図の黄色及びオレンジ色)。
地域防災拠点である八景小学校では1m以上2m未満の津波浸水が想定されており、同小学校まで避難するにも浸水域を通る必要があります。このため、パークシティで床上浸水の可能性がある1階の全ての住戸の避難先としては現実的ではありません。
横浜市立大学は広域で大規模な火災が発生した場合の広域避難場所に指定されていますが、やはり延焼の可能性がある全ての住戸の避難先とするのも現実的ではありません。
このように、当パークシティは在宅避難を基本とし、床上浸水の可能性がある1階の住戸や失火した家屋・延焼の恐れがある住戸の一時避難先として、延焼の恐れのない階段の上方に避難することが基本になると考えられます※。(※:実際に出火・延焼した住戸と床上浸水した住戸の長期避難先としては別途考える必要あり)
また在宅避難を基本とするためには、全住戸が出火防止、家具転倒防止に取り組むこと、また停電・断水の長期化に備えた飲料水と簡易トイレを備蓄することが必要です。